今回は、ボビイ・ボイルという1960年代後半から活動した女性シンガーを紹介します。4/21にMUZAKさんよりリリースされた彼女の未発表音源集『ノー・ラヴ・ソング』。僕は僭越ながらそのCDのライナーノーツを書きました。(カワズ)
ボビイ・ボイルは1960年代後半からロサンゼルスを中心に活動したシンガー兼ピアニストです。2枚のアルバムをリリースしているのですが、マイナーレーベルからのリリースということもあり当時は話題になることなく、ヒットチャートを賑わす存在にはなりませんでした。ところが1990年代に入って、一部のレコード・コレクターやDJの間で評判となり、再評価されることになります。
"A Day in the Life" (1968)
特にファースト・アルバム『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』は、ロジャー・ニコルズ・アンド・ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズでお馴染みのソフトロックなキラーチューン「Love So Fine」のカバーヴァージョンが収録されていることも手伝って、希少な高額アイテムとして中古盤市場に長く君臨していました。2000年代になると、そのファースト・アルバムはアメリカの再発レーベルから初めてCD化。そして2016年、『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』とさらにレアなセカンド『ボビイ・ボイル・シングス』がMUZAKさんより日本国内盤CDとしてリリースされました。
"Bobbi Boyle Sings" (1970)
今回リリースされた『ノー・ラヴ・ソング』は、彼女が現役で活動していた時期に録音していた未発表音源(1966〜1970)から新たにコンパイルした作品集です。収録曲はジャズのスタンダードが中心で、何曲かボビイのオリジナルナンバーも。彼女の持ち味であるメロウなボーカルと、ソフトロックを基調とした洗練されたアレンジの妙が素晴らしく、単なるジャズ・ボーカルものとは一線を画すエレガントな仕上がりになっています。彼女は2009年に他界しているため、本作はいわゆる企画盤ではあるのですが、どの曲も驚くほどクオリティが高く、個人的には2枚のオリジナルアルバムを凌駕する内容だと感じています。
なお本作は、ボビイ本人の自宅に眠っていたオープンリールの音源を、彼女の息子さんが彼女の死後に“発掘”したものです。50年近くの時を超え、こうしてCDとして聴くことが出来ることはとても感慨深いものがあります。彼女が遺したこの価値ある音源群をぜひこの機会に堪能してみてください。
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ボビイ・ボイル 『ノー・ラヴ・ソング』
- ノー・ラヴ・ソング
- フィーリン・グッド
- サムタイム・アイム・ハッピー ~ライフ・イズ・ジャスト・ア・ボウル・オブ・チェリー (メドレー)
- トミーズ・イン・ラヴ
- チム・チム・チェリー (inst.)
- 晴れた日に永遠が見える
- ザ・ファースト・オブ・メイ
- イッツ・ユー・オア・ノーワン
- ザ・グリーン・リーヴス・オブ・サマー
- インタールード
- 春の如く
- マイ・フェイヴァリット・シングス (inst.)
- レイジー・アフタヌーン
- ヒアズ・ザット・レイニー・デイ
- ラック・ビー・ア・レイディ
- ライト・アズ・ザ・レイン
- クリケット
- いそしぎ
- サイクル (inst.)