2022年1月16日日曜日

Beach Fossils "The Other Side of Life: Piano Ballads"


ブルックリンのインディーバンド、ビーチ・フォッシルズの2021年作『The Other Side of Life: Piano Ballads』がとても良かったので紹介します。(カワズ)

ここであらためて紹介するまでもないかも知れませんが、ビーチ・フォッシルズは、NYブルックリンのインディーバンド。2009年に結成され、数枚のスタジオアルバムをリリースしています。ローファイでソフトサイケデリックなバンドサウンドが支えるセンチメンタルな歌はどこか懐かしさが漂っていて、フロントパーソンであるダスティン・ペイサー(Dustin Payseur)のビタースウィートなボーカルも魅力的です。

2021年にリリースされた『The Other Side of Life: Piano Ballads』は、バンドの既発の楽曲をジャズアプローチで再構築したセルフカバーアルバムです。サブタイトル《Piano Ballads》が示すとおり、本作はピアノがメインに据えられています。その弾き語りから始まり、ダブルベースやサックスなどが丁寧に折り重なると、徐々に馴染みの歌が哀愁に満ちていきます。

興味深く感じたのは、ダスティン・ペイサーのボーカルです。纏っていたローファイなインディーサウンドを脱ぎ、リッチに仕立てられたジャズアレンジに姿を変えたのに、彼の歌はオリジナルバージョンと全然変わっていません。エバーグリーンなメロディーラインもそのまま。感傷的で、消え入りそうで、青臭くて、浮遊するような、そうしたビーチ・フォッシルズのコアの部分、彼らのユニークさはそれでもなお本作にも確かに宿っていると感じました。

そしてこのネイヴィー・ブルーのジャケット。アナログ盤で届いて眺めていると、ある古い作品が頭を過りました。それは、オランダのジャズ・ボーカリスト、アン・バートンの『Burton For Certain: 雨の日と月曜日は』です。混じり気の無い青色の背景が印象的なジャケットの『Blue Burton』(1967)から10年近く経ってリリースされた作品で、歌手としての深みを増したことを示唆するように、彼女はネイヴィーのドレスを着ています。そう、つまりこれは単なるこじつけですが、ビーチ・フォッシルズのバンドカラーが青だとしたら、本作『The Other Side of Life: Piano Ballads』のジャケットの色合いは、経年と成熟のメタファーだと感じています。

左『Blue Burton』(1967)
右『Burton for Certain』(1977)

正直にいうと、僕はビーチ・フォッシルズの熱心なファンではありません。過去のアルバムや楽曲に触れたことはありますが、レコードやCDを買うほどの存在ではありませんでした。このブログを読んでくださっている方がどうなのかは分かりませんが、本作は、自分と同じようなリスナーの方にも是非聴いて頂きたい一枚です。


Tracklist
1.This Year
2.May 1st
3.Sleep Apnea
4.What a Pleasure
5.Adversity
6.Down the Line
7.Youth
8.That’s All for Now