2020年1月12日日曜日

クワイエット・インドネシア

今週は最近のインドネシア音楽の特集です。昨年リリースされた中から、すでに中堅的な存在として活躍している3組による、繊細で静かな作品を紹介します。(カワズ)





Danilla "Fingers" (2019)

女優としても活動するフィメール・シンガー&ソングライター、Danilla(ダニラ)の最新ミニアルバム。過去作と比べると、彼女の特徴ともいえる情感たっぷりのボーカルスタイルは抑え気味ですが、メランコリックなざらつきが無くなったかといえばむしろ逆。この国の女性歌手にありがちなジャズボーカル〜ボサノヴァといったある意味「綺麗で整った音楽」とは完全に距離を置き、悲しくも美しいサッドコアな世界観を描いています。全5曲、トータル15分に満たない作品ですが、一人の成熟したアーティストが自ら切り開いた新境地であり、ターニングポイントとなるであろう重要作。
♪Danilla - Fingers (Full Album)


Duta Pamungkas "Pardes" (2019)

フォークデュオMarcoMarche(マルコマルシェ)を率いるDuta Pamungkasのセカンド・ソロアルバム。洗練されたアコースティック・ポップを作らせたら、現在のこの国のインディーシーンで彼の右に出る者はいない。本作も全曲クオリティーが高く、改めてそう確信しました。特に胸に響いたのは、繊細で高い透明度を醸し出す楽曲(「Psalms of Heaven」や「Love is」等)。スタイルもシーンにおける一定の評価も確立しているマルコマルシェ以上に、ソロ作品のほうが彼の守備範囲の広さや音楽的才能が良く表れていると感じます。今後の期待がさらに高まるのは言うまでもありません。
♪Duta Pamungkas - Psalms of Heaven
♪Duta Pamungkas - Love Is (feat. Achi Hardjakusumah)
♪Duta Pamungkas - Ku


Adhitia Sofyan "Other Side" (2019)

2017年以降、自身の自主レーベルQuiet Down Recordsからリリースを続けているアディティア・ソフィアン。本作で彼は、これまでとは少し別の顔を覗かせています。歌詞を正確に聴き取った訳ではありませんが、「I Don’t Celebrate My Birthday」や「Doomsday Song」といった曲名から明らかなように、ここに描かれているのは、これまでとは違った、随分と仄暗い世界、つまり《Other Side》です。しかしいつものアディディア節、馴染みあるメロディーラインは健在。むしろ近年の作品より音楽的にはよりポップで親しみ易い作風に仕上がっています。彼の紡ぐ歌には、どんなネガティブな境遇でも変わらない普遍的な強さが宿っている。そんなことを証明してくれる一枚だと感じました。
♪Adhitia Sofyan - Please Comment
♪Adhitia Sofyan - I Don't Celebrate My Birthday
♪Adhitia Sofyan - Doomsday Song