今日は、今年の夏に日本盤として発売されたアルバム、ムーンズ『木と火の歌たち』をご紹介します。暖かなストーブに身を寄せたくなるこの季節にぴったりの一枚です。(カワズ)
ムーンズは、ブラジルの音楽家アンドレ・トラヴァッソスによるソロユニット。インディ・ロックバンドでの活動も行なっている人物だそうですが、本作はソロ名義のアルバムです。テイストとしては、シンガー・ソングライター作品特有の孤独感や内省的な雰囲気を携えたフォーキーな楽曲が中心です。
冒頭の「Hunting You」をはじめ、作品全体の通奏低音のように随所に添えられるストリングスがたいへん素晴らしく、アコースティックギターを軸とした乾いた質感の音楽性に上品でシックな彩りを与えています。4曲目の表題曲「A Song of Wood and Fire」はその美学が丁寧に織り込まれた白眉のナンバーです。
注目すべきこととして、本作は自らもソロミュージシャンとしてキャリアを持つレオナルド・マルケスがレコーディング~プロデュース~ミックス~マスタリングを手掛けています。ブラジル・ミナスを活動拠点とするレオナルドは2015年の自作セカンド『クルヴァス、ラードス、リーニャス・トルタス、スージャス・イ・ヂスクレタス』で、エリオット・スミスらを彷彿とさせるペーソスに満ちたアメリカン・インディロックを鳴らしつつ、ミナス地方で生まれた過去の素晴らしき音楽に共通して宿る「メランコリーな空気感」を同時にそこに重ねました。ムーンズ『木と火の歌たち』が醸し出す世界観は、その延長線上にあると個人的には確信しています。きっとレオナルドの作品のファンなら本作も気に入るはずです。
レオナルド・マルケス「Ilha do Corvo」
また、油彩で描かれたジャケットのアートワークも素晴らしいので、いつか重量感のあるアナログレコードでリリースされることを切に願っています。
Moons (ムーンズ) – Songs Of Wood And Fire (木と火の歌たち)
- Hunting You
- Golden Sun
- Don't Believe the Truth
- Good Luck Baby
- A Song of Wood and Fire
- Couple Fated to End
- The Best Thoughts About You
- Ghost Boy
- Fake Eye Lashes
- We Don't Talk
- production dessinee
- PDCD-190
- 2,300円+税