熊本シティエフエム金曜日の番組「セレナ・セラータ」の音楽コーナー《Sound of Afterglow》の42回目が放送されました。今回は、ニューアルバム『ULAAN』をリリースしたモンゴル出身のシンガー・ソングライター、エンジ(Enji)を特集しました。(カワズ)
Enji(エンジ)はモンゴル出身で現在はドイツ・ミュンヘンで活動するシンガー・ソングライター。この曲が収録されている1stアルバム『Mongolian Song』は、モンゴルを代表する作曲家センビーン・ゴンチグソムラー(Sembiin Gonchigsumlaa)のカバー集です。アメリカの伝説的なドラマー、ビリー・ハート、ドイツのサックス奏者ヨハネス・エンダース、イギリスのピアニスト、ポール・カービー、そして彼女の指導者であるベースのマーティン・ツェンカーという面々で構成され、モダンでクールでダイナミックなジャズ作品に仕上がっています。
Enji(エンジ)の2ndアルバム『Ursgal』(2021)から3曲紹介しました。「Zavkhan」をはじめ、モンゴルの伝統音楽にジャズやフォークが融合し、最小限の構成で独特の世界観を醸し出しているアルバムで、個人的にも2021年のベストアルバムのひとつです。Bandcampの本人のサイトから直接このアルバムのアナログ盤を購入しました。ウランバートルに生まれ、労働者階級の家族のもとユルト(遊牧民族の円形型移動テント)で育ったというエンジ(Enji)は、ゲーテ・インスティテュート(ドイツ政府が設立した公的な国際文化交流機関)のプログラムをきっかけに音楽家の道に進んだのだそうです。現在ドイツを拠点に活動しているのは、そのときの接点があったからであると推察します。
コーナー後半は、Enji(エンジ)の最新3rdアルバム『ULAAN』(2023)を紹介しました。特筆すべきは、本作にはクラリネット奏者ジョアナ・ケイロス(Joana Queiroz)とドラマーのマリア・ポルトガル(Maria Portugal)が参加していること。2ndアルバム『Ursgal』は内省感や繊細さが際立つテイストの作風でしたが、二人のブラジル勢の参加が良い効果を発揮したのか、『ULAAN』はそれに加えてダイナミックなテイストも感じられ、より奥行きを感じるサウンドになっていると思います。ジョアナとマリアの二人はサンパウロのアヴァン・バンド、クアルタベー(QUARTABE)のメンバーなのですが、ジョアナ・ケイロスとエンジはどちらもドイツのレーベルSquamaからリリースしていて、マリア・ポルトガルはドイツを拠点に活動しているので、ドイツを接点に実現したコラボレーションといえます。ダークでインダストリアルな質感のジャズ、モンゴル民族音楽、そして新世代のブラジル音楽が融合した素晴らしいアルバムだと思います。
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今回オンエアした楽曲を中心に構成したSpotifyのプレイリストを作成しました。オンエア以外の曲も含めてセレクトしていますので、ご興味のある方はこちらもぜひ。