1975年に自主制作され、2013年にCD化された一枚が、先日レコードになって再発されました。幻の名盤、河名伸江『のぶえの海』を今日は紹介します。（カワズ）
このアルバムはシンガー・ソングライター河名伸江による唯一の作品で、1975年にひっそりとリリースされていた自主制作盤です。彼女が10代のころに録音した楽曲で構成されていて、洗練されたメロディーラインとメランコリックな歌詞の世界観が刻まれています。参照されている音楽性はボサノヴァやアシッド・フォークなど。他のレビューを見ると、親和性のある女性シンガー・ソングライターとして、同じく1970年代初頭に活動していた金延幸子や、若き日の荒井由実らの名前が挙がっています。
そうした面々と同様、若くして才能の片鱗を見せていた河名伸江ですが、高校時代から病気を患っていたようで、二十歳の誕生日を迎えた1974年に若くして亡くなってしまいました。つまり生前の彼女は、自分の作品が後にフィジカルになり、世に出されたことを知りません。アルバムに添えられた当時のライナー文によると、本作『のぶえの海』は、彼女の死から1年が経って有志がレコード化したのだそうです。
それから38年間、全く日の目をみることのなかった『のぶえの海』は、2013年にBRANCO LABEL（ブランコレーベル）からCDになって再発売されました。僕は、その時に初めてこの作品の存在を知り、SNSに短いレビューを書いていました。
#日々の余韻 [253] 河名伸江 『のぶえの海』 (1975) 1974年6月、二十歳の誕生日にこの世を去ったシンガー・ソングライター、河名伸江。彼女が生前に自主製作で録音した作品集は、2013年の再発盤の中で、個人的に最も衝撃を受けた一枚です。（続く）
— カワズ (@kawa_z) December 28, 2013
#日々の余韻 （続き）純朴さの隙間から滲み出る、フォーキーで翳りある旋律に感涙。タイトルは演歌みたいですが、だまされたと思って聴いてみてください。彼女が紡いだ、繊細で儚い世界の残響に触れることができます。https://t.co/hlQOX0Ru1f
— カワズ (@kawa_z) December 28, 2013
あれから10年が経って、こうしてレコード化されたことを本当にうれしく思います。いつかLPでも再発されたらなあとずっと思っていたので、再発のニュースを知り、すぐに予約して買いました。
このブログのタイトルである「afterglow」は、余韻、残像、名残りといった「後に残るもの」という意味があります。当時は全く知られていなかった本作『のぶえの海』は、まさにこの小さな音楽ブログのテーマに優しく寄り添ってくれる素敵な一枚だと思っています。
河名伸江 - のぶえの海・ショートサンプル音源
5060円（税込）
Branco Label branco-05LP
2023年年6月発売（1970年代初頭録音作）
収録曲：
1. はじめての朝
2. ナレーション
3. あなたは海
4. ナレーション
5. 風船の旅
6. こわれた砂山
7. ナレーション
8. 愛の雫
9. 貝がらの想い出
10. ナレーション
11. 雨の降る砂浜
12. 海の風景
13. 雨の降る砂浜(スタジオ録音)
14. 街の風景
15. 今日はふたり
16. ナレーション
17. これが愛なのかしら
18. 白い愛
19. ナレーション
20. あなたと初めて会った海
21. あなたと初めて会った海(スタジオ録音)
22. あなたは海(スタジオ録音)
23. ナレーション
24. あのとき限りの私たち
