シンガポールのインディーバンド、Hanging up the Moonが今年5月にリリースした7インチEP『For the Time Being』を紹介します。(カワズ)
Hanging up the Moonは、かつてConcave Screamというバンドで活動していたシンガポールの音楽家、ショーン・ラムを中心としたバンド。今年5月にグループ初の7インチレコード『For the Time Being』(4曲入り)がリリースされました。
彼らはこれまでに4枚のアルバムをリリースしています。内省的でフォーキーなインディーロックの雰囲気と、そこに見え隠れするポストロック的なヒリヒリとした緊張感が魅力で、いずれも甲乙つけ難い素晴らしい作品です。2ndと3rdアルバムはharuka nakamuraやAspidistraflyなどを擁するKitchenレベールからリリースされていたということもあり、少なくとも日本では、アンビエント~ポストクラシカル勢との接点で紹介されることが多かった気がします。
今年の5月にリリースされたこの7インチEPは、これまでのそうした彼らのイメージとは少し異なる内容になっています。ギターのストロークやカッティングにはどこかAOR~シティーポップ的な洗練さと爽やかさがあり、メロディーもよりポップで親しみ易く、リズムからも明るく楽しげなグルーヴを感じとることができます。特にタイトル曲でもあるラストの「For the Time Being」ではそれが顕著。台湾の林以樂をコーラスに迎え、とても心地よい疾走感の溢れるインディーポップに仕上がっています。
とはいえ、Hanging up the Moonのアイデンティティーが根本から刷新されたような類いの変化ではなく、これまで彼らが追求してきたサウンドデザインを土台にしながら、さらに新たな一面が加わったような作風になっています。過去との決別というよりバンドがむしろ変化球を楽しんでいるように個人的には感じています。
盛り上がるアジアシーンを象徴するようなコラボレーション。7インチ盤というキャッチーなフォーマット。洗練されたシティーポップのテイスト。気鋭のインディーバンドによる、時代の空気を捉えた一枚といえそうです。
Hanging up the Moon "For the Time Being"
- Hold The Colours
- Rose Tinted
- Sunrise To Sunset
- For The Time Being