2020年2月23日日曜日

ユニーク・サロンガ『グランマ』（Unique Salonga "Grandma"）

先日来日公演を行ったフィリピン・マニラの若手人気バンド、IV of Spades。そのフロントマンだったユニーク・サロンガ（Unique Salonga）のファースト・アルバム『Grandma』を紹介します。（カワズ）

ユニーク・サロンガ（Unique Salonga）は、今フィリピンで最も勢いのあるバンドIV of Spadesのメンバーだった人物です。2014年に結成されたIV of Spadesはシングルの動画再生回数が1億回に及んだり、欧州のMTVアウォードにノミネートされるなど、本国以外でも人気を博すグループで、先頃来日公演も行いました。ユニーク・サロンガはバンドのリード・ボーカル／フロントマンであり、グループへの影響力もファンからの人気も高かったようですが、自分の音楽を追求したいという思いから、周囲に惜しまれながら2018年にIV of Spadesを脱退しました。ソロ転向後に立て続けにシングルを発表し、2018年8月にソロファースト・アルバムとしてリリースしたのが、本作『Grandma』です。

ご覧の通りのジャケットのアートワーク、まるでベテランのヘヴィメタバンドと間違われそうです。でも実際には、サイケデリック・ロックを通過した後の、シャープでエッジの効いた80sサウンドだったり、あるいは90年代のUKシーンを彷彿とさせる楽曲もあったりと、都会的でとても洗練されています。それから、シンプルながら普遍的で親しみやすいメロディラインにも光るものがあります。
2000年生まれという若い彼にとっては、いずれも前の世代のさまざまなジャンルの音楽からのエッセンスが本作の土台になっているといえますが、決して懐古主義ではなく、それらを現代的な感性と絶妙なバランスで共存させており、アルバム全体を通してとても聴き応えあるアルバムだと思います。IV of Spadesもいいバンドだと思いますが、個人的にはこちらの方が好みです。

数年前からフィリピンのインディーズは才能ある若手が次々と出現していて、ジャンルもバラエティに富んでいます。掘り下げ甲斐のある、興味深いシーンの一つだと感じています。