インドネシアの伝説的なインディーバンド、ザ・モノフォンズ (The Monophones)の2曲入り7インチ盤レコードがプロダクション・デシネからリリースされました。僕はその付属のライナーノーツを書きました。(カワズ)
ザ・モノフォンズ(The Monophones)は、インドネシアで2000年代前半に活動した4人組バンドです。21世紀に入って、インドネシアではいくつかの魅力的なインディー・オルタナバンドが登場し、新たな音楽シーンを形成しました。例えば世界的にも知名度の高いホワイト・シューズ&ザ・カップルズ・カンパニー(White Shoes & the Couples Company)や、モンド・ガスカロが所属していたソレ(Sore)などがその代表的なグループに挙げられます。2003年に結成されたザ・モノフォンズは、インディーバンドならではの荒削りなギターポップをベースにしながら、ボザノバやソフトロックなどの洗練された音楽性を取り入れたグループで、2006年に『A Voyage to the Velvet Sun』というたいへん優れたアルバムをリリースしたのですが、この一枚を残してバンドは空中分解してしまいました。
今回リリースされた7インチ盤レコードは、そのアルバムに収録されているナンバーから2曲がカットされたものです。どの曲も素晴らしいので、本心を言えばアルバムでリイシューされたらなお良かったのですが、それはまたの機会を待ちたいと思います。
実はその唯一のアルバム『A Voyage to the Velvet Sun』は、2015年に一度インドネシアでカセットテープでリイシューされたことがあります。リリースを手掛けたのは、モンド・ガスカロが主宰するレーベルIvy League Music。彼の妻であり、レーベルのA&RであるSarah Glandoschは、このアルバム再発に伴い、当時以下のコメントを発表しました。良い作品をレコード(=記録)として将来に残すことの大切さが伝わってくる、とても意義深い文章だと思いますので、ここに転載します。
❝歴史をきちんとアーカイブするということは、長年インドネシアの音楽産業が抱える大きな課題となっています。過去この国で作られた音楽作品やそれらについての文書の多くが、適切に管理されることなく、すでに消えて無くなっているか、忘れ去られているのが実態です。この問題は、その他の産業、教育、カルチャー全般についても同じことがいえます。ですから過去の作品を再発することは、インドネシアにおけるこうした状況を改める一つの方法であると考えています。(Sarah Glandosch)❞
元々記録された音楽というのは手に取ることが出来ないものであるため、それをパッケージする“箱”、つまりレコードやCDやカセットテープの存在は、後世に残すには必要なものだと考えます。最近ではストリーミングのみでリリースされる作品も多いですが、サービスが終わってしまえばそれっきり。そう思うと、ただでさえ日本ではまだまだ手に入りにくいインドネシアのポップミュージックが、こうしてレコードという耐久性の高いフォーマットで流通されるのは、とてもありがたいことです。
実際にザ・モノフォンズの音源は、Apple MusicやSpotifyといった昨今の音楽配信サービスには登録されていません。ぜひこの機会に、手にとって楽しんで頂けると嬉しいです。
♪The Monophones - Rain of July
♪The Monophones - A Voyage To The Velvet Sun
♪The Monophones - Rain of July
♪The Monophones - A Voyage To The Velvet Sun
A1. Rain Of July[7月の雨]
B1. A Voyage To The Velvet Sun[ビロードの太陽への旅路]