2019年11月17日日曜日

日々の余韻アーカイブス(その20)~憂鬱な音楽~

今日の投稿は、以前【日々の余韻】というタイトルでSNSに毎日アップしていた投稿のアーカイブ記事です。2000年以降にリリースされた、ひと際メランコリックな質感のアルバムを集めてみました。(カワズ)



2013年4月15日 【日々の余韻 Daily Afterglow 004】
Yonlu "A Society In Which No Tear Is Shed" (2009)
2006年、わずか16歳と10ヶ月で自ら命を絶ったブラジル人天才シンガーソングライターYonlu。メランコリックでビタースウィートな歌声は、同じく早くしてこの世を去ったエリオット・スミスを彷彿とさせます。郷愁を誘う心地良いボッサ、十代の若者とは思えないメロディセンス、そして混沌から滲み出る無限の可能性。彼が生きるかもしれなかった未来に少しだけ触れた気がしました。


2013年6月8日 【日々の余韻 Daily Afterglow 058】
The Young Group "14" (2008)
日本人デュオ、The Young Groupが2008年に発表した二作目。2本のギターと声の響きはとても温もりがあるのに、このアルバムの音空間は途轍もなくひんやりと、ひりひりとしていています。木漏れ陽が似合うメロウなフォークとも幽玄のアシッドフォークとも違う、圧倒的に異質な世界観を持つ音楽。ジャケットの<白>やタイトルの<14>は、この作品を支配する残酷な美しさを象徴しているかのようです。


2013年08月17日 【日々の余韻 Daily Afterglow 128】
Mark Eitzel "Don't Be A Stranger" (2012)
アメリカン・ミュージック・クラブのフロントマン、マーク・アイツェルの2012年のソロ作。前年に自身が心臓発作を患ったことが影響しているからか、人生の儚さが、あくまでドライかつ客観的に描かれている。中でも最も象徴的なのは冒頭の「I Love You But You're Dead」。自らが察した死の可能性を思い返すように、深い闇に灰色のメランコリアを注ぎ込む。これほどまでに哀しく虚しい“I Love You”のフレーズを、僕は未だかつて聴いたことがない。


2013年8月29日 【日々の余韻 Daily Afterglow 140】
Syd Matters "Ghost Days" (2008)
フランス出身のバンド、シド・マターズが2008年にリリースしたアルバム。冒頭の「Everything Else」は、『ゴースト・デイズ』というタイトルを象徴するような、血の気の引いたギターのアルペジオが印象的なナンバー。そして、“I Thought I Was Dead”から始まる歌詞と、寂然とした空気の中をたゆたうメランコリックなムーグの調べで、この作品の世界観に一気に引き込まれます。ヒリヒリした肌触りの中に、独特の浮遊感と幻想的なサウンドスケープが広がる一枚。


2013年9月12日 【日々の余韻 Daily Afterglow 154】
Paul Buchanan "Mid Air" (2012)
グラスゴーのバンド、ブルー・ナイルを率いるポール・ブキャナンのソロアルバムは、シンプルなピアノと、渋く深みのある彼のボーカルを主体に構成された作品です。テンポもトーンも全体を通して殆ど変わらないからか、まるで一つの長い曲を聴いている様な感覚になります。車の中、バーの片隅、あるいは真夜中のベッドルームで。街の喧騒をかき消し、聴く者の心のざわつきをそっと鎮め、そして静寂を呼び覚ますスペシャルな一枚。


2013年11月19日 【日々の余韻 Daily Afterglow 214】
Sean Lennon "Friendly Fire" (2006)
ショーン・レノンのセカンドアルバムは、デビュー作『Into the Sun』とは違った色合いを持つ、繊細で内向性の高い一枚。重厚なサウンドともに、「dead」「die」「down」などの重苦しい歌詞が散りばめられたこの作品の世界観は、最初から最後まで憂いとペーソスに支配されています。でも、どの曲も『Into the Sun』以上にメロウで親しみやすさがあり、それゆえ後味は決して悪くなく、むしろ救われた気持ちになるアルバム。もしエリオット・スミスが生きていたら、こんな作品を作って欲しかったな、などと思い描いてみたり。