熊本シティエフエム金曜日の番組「セレナ・セラータ」の音楽コーナー《Sound of Afterglow》の48回目が放送されました。今回は日本のバンド、Lampが昨年リリースした最新アルバム『一夜のペーソス』を大特集。全20曲の中から7曲をご紹介しました。(カワズ)
Lampの最新アルバム『一夜のペーソス』は前作『彼女の時計』(2018)から5年ぶり、全20曲入りの大作で2023年10月にデジタルリリースされました。現時点ではフィジカルではリリースされておらず、SpotifyやApple
Musicなどの各種サブスクリプションサービスや、Bandcampを通して聴くことができます。
『一夜のペーソス』に収録されている全20曲のうち、番組では7曲を紹介したのですが、今回の選曲はいつも以上に苦労しました。というのも、今作はアルバム全体としてどこか一筆書きのような作品になっているように自分は捉えていて、アルバムを何度も通して聴いた後では、曲単位で切り出すことに少し違和感を感じてしまったのです。ある曲は次の曲とシームレスに繋がっていたり、またある曲は組曲のように構成されていたり(そうした緻密な設計は『東京ユウトピア通信』に近い気がします)。それから、歌詞や曲のタイトルには過去の彼らの作品との接点もあったりして、 本作を聴くことで、Lampの音楽の世界観全体をより深く味わうことができるように思います。
また今作では、ミキシングに対するチャレンジングな仕上がりがサウンド面における特徴の一つになっているように思います。一般的な録音物では、メインボーカルは中央から聴こえることが殆どだと思うのですが、『一夜のペーソス』収録曲の大半で、榊原さんと永井さんのボーカルはそれぞれ左右に配置されています。僕はイヤホンで音楽を聴くことが多いので、左または右から流れる二人の歌がどこか囁き声のように聴こえ、とてもパーソナルな体験をしているような気分を味わっています。
ストリーミングサービスやSNSがきっかけとなり爆発的な人気を得たアーティストであれば、例えばこまめにシングルをデジタルリリースしたり、あるいは、20曲まとめてではなくEPなどの単位で小分けにリリースすることもマーケティング手法としては効果的であったはずです。でもLampは『一夜のペーソス』のリリースにあたり、アルバムの告知もバンドのブログやSNSだけで大がかりな宣伝活動は一切しませんでした。事前に音楽関係者等へのサンプル音源の配布もせず、解禁までに仕上がりをチェックしていたのはメンバーとエンジニアのみだったそうです。
サブスク全盛時代にそぐわない全20曲という長尺のアルバムをリリースした彼らの自信、勇気、チャレンジ精神、マイペースさ、揺ぎ無さ、そして売り方(マーケティング)ではなく、実直に自身の音楽とリスナーに向き合うそうした姿勢にあらためて感銘を受けました。
Lampの今後の予定として、すでに海外での演奏も予定されていますし、その後は他の国での公演があるかもしれないので、その流れでいつか国内でもライブが見れたらいいなと思います。
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今回オンエアした楽曲を中心に構成したSpotifyのプレイリストを作成しました。オンエア以外の曲も含めてセレクトしていますので、ご興味のある方はこちらもぜひ。