フロリダ出身のThe Postmarks(ザ・ポストマークス)は2000年代インディーポップの中でも、個人的に大好きなバンドの一つです。とりわけ2007年リリースに発表されたセルフタイトルの1stアルバム『The Postmarks』はオールタイム・フェイバリット。彼らはその後、カバー集『By the Numbers』(2008)とオリジナルアルバム『Memoirs at the End of the World』(2009)をリリースしたのですが、2010年代以降はグループとして目立った活動はしていないようです。ザ・ポストマークスのメンバーはあれから個々にどんな活動をしているのか気になったので少し調べてみました。(カワズ)
Tim Yehezkely
まず、ポストマークスでボーカルを務めたTim Yehezkely。彼女は、Tim &
Adamというデュオで2013年にアルバムをリリースしています。ガレージ〜サイケデリック〜エクスペリメンタルなインディーポップが詰まっていて、ポストマークスの世界観とは一線を画す内容になっています。
またこのデュオは、同じ年にリリースされたコンピレーション『Eaperanza: Songs of Jack Kerouac’s Tristessa』でも曲を提供しています。アルバムに比べて幾分フォーキーな仕上がりになっているのですが、それは、本コンピに通底するテーマであるケルアックの著書『トリステッサ』に対するインスパイアが作用した結果なのだろうと思います。ちなみにこのアルバムには、William Fitzsimmons(ウィリアム・フィッツシモンズ)やGregory Alan Isakov(グレゴリー・アラン・イサコフ)などの楽曲も収録されていて、まるでクワイエット・コーナーを彷彿させるラインナップ。個人的はグレゴリー・アラン・イサコフによる「O' City Lights」がベストトラックです。
本題に戻ると、今年に入ってTimはTiger Arcedeというシンセプレイヤーがリリースした配信シングル「Lissajous Daydream」にボーカリストとして参加しています。先述のTim
&
Adamよりもポストマークス寄りの音楽性でなかなか良い感じなので、この2人であと何曲か聴いてみたいと感じました。
Christopher Moll
続いては、ポストマークスの中心人物であるChristopher Moll(クリストファー・モール)。ポストマークス以降の彼の仕事のうち、特筆すべきはThe Lovers Keyというユニットでの活動だと思います。2014年にスタジオアルバム『Here Today Gone Tomorrow』とライブアルバム『Live at Respectable Street』がリリースされていて、音楽性は生音主体のヴィンテージな質感のソウルポップという趣きでとても良いです。特にアルバム冒頭の「Saturday
Night」は秀逸なナンバー。是非ともアナログ盤でリリースして欲しい一曲です。
彼のオフィシャルページでその他のディスコグラフィーを確認できるので、良かったらチェックしてみてください。
J. Phillip Wilkins
最後に、ポストマークスのもう1人のメンバーJ. Phillip Wilkins(ジョナサン・フィリップ・ウィルキンズ)について。バンド加入前、Summer Blanketをはじめ様々なインディーバンドの録音に参加してきた彼は、ポストマークスの活動停止後、Our Man In PompanoやGrand Theft Ottoといった複数の名義でプロデューサーやコンポーザー、リミキサーなどで活動しているようです。さらに彼は元々アートディレクターとしての顔も持っています。先述のTim & AdamのMV「So Much More」も彼が手掛けたようです。
また、Lucrative Angst Recordsというレーベルを主宰しているようで、Bandcampのオフィシャルページには彼が(恐らくは中心的存在として)関わった音源が複数公開されています。何曲か聴いてみた中で最も自分の耳にフィットしたのは、2018年の「This World (Can Keep Good People Down)」という曲でした。The Concernという名義で、シンガーソングライターのJohn Ralstonとコラボレーションしているナンバーです。
J. Phillip Wilkinsについては、YouTube、Bandcamp、SoundCloudなどの様々なプラットホームで、且ついろんな名義でジャンルレスに活動していたりして、正確に情報をお伝えできている自信がないので、婉曲的な表現になっている点をご了承ください。
最後に、10年以上目立った活動のないザ・ポストマークスですが、解散したわけではないようで、その証に各種SNSのオフィシャルアカウントが今も存在しており、かつ時折投稿されています。
それから、2020年に公開された映画「Record Safari」のサントラLPには、彼らの1stアルバムから「You Drift Away」が収録されています。
いつか1stアルバムがアナログ盤で聴けたり、バンドが再始動したりする日が来るといいなあと心待ちにしています。
You Drift Away / The Postmarks