2022年6月26日日曜日

Sound of Afterglow vol.27 《Jazz in Asia》

熊本シティエフエム金曜日の番組「セレナ・セラータ」の音楽コーナー《Sound of Afterglow》の27回目が放送されました。今回は《アジアのジャズ》をテーマに近年の楽曲を紹介しました。(カワズ)

Jaubi(ジャウビ)はパキスタンのラホール出身のメンバーによって構成されている4人組グループ。中心人物のアリ・リヤズ・バカールは現在オーストラリア・メルボルン在住なのだそうです。お届けしたのは2021年のセカンド『ナフス・アット・ピース』収録曲。アルバムはエスニック、エレクトロニカ、スピリチュアル・ジャズなどのエッセンスが融合したクロスオーバーな作品で、どの曲も素晴らしく、一曲選ぶのに結構悩みました。

Enji(エンジ)は、モンゴル・ウランバートル生まれの女性ジャズ・シンガーで、現在はドイツ・ミュンヘンを拠点に活動しています。当初は音楽教師を目指していたそうですが、ドイツ政府が設立した国際文化機関がモンゴルで提供していたジャズ教育プログラムがきっかけとなりジャズ・アーティストの道に進んだのだそうです。紹介したのは、2021年のアルバム『Ursgal』収録曲。エンジのボーカルと、ギター、ダブルベースの3人編成で、アルバム全体でとても繊細なサウンドを紡いでいます。モノクロのアルバムジャケもその世界観とマッチしています。

ソウル生まれ、大学でジャズを専攻したYun Seok Cheol(ユン・ソクチョル)を中心にとするピアノトリオ。ロックやインディーズバンドのような感覚のジャズグループを作りたい、という思いからトリオ結成したのだそうです。この曲のオリジナルは元々2016年にリリースされたEPに収録されているのですが、お届けしたのは、2018年『D♭ in April』でセルフリメイクした新録バージョン。原曲はオーソドックスなモダンジャズですが、このバージョンは現代的なアレンジで洒落ています。因みに、韓国のシンガーソングライターLucid Fall(ルシッド・フォール)とは、Antenna Recordsのレーベルメイトです。

Erikson Jayanto(エリクソン・ジェイアント)はインドネシア・ジャワ島在住のコンポーザー/アレンジャー。詳しいプロフィールは不明ですが、ビジュアル素材を見る限りずいぶん若い音楽家です(多分20代)。オールドスタイルなビックバンドのオーケストラアレンジが効いた曲調からは、エンニオ・モリコーネやミシェル・ルグランが手掛けた映画音楽を彷彿させます。同じくインドネシアの若手気鋭、アルディート・プラモノの曲をアレンジした実績もあり、二人はフェスで共演したりもしているようです。

ジャズギタリストGerald Situmorang(ジェラルド・シタモラン)と、ジャズピアニストのSri Hanuraga(スリ・ハヌラガ)の二人のデュオ作品『Meta』(2019)収録曲。短尺の曲ながら、二人の息のあった端正なプレイが見事で、「新しい扉を開いて」という曲のタイトルもぴったりの解放感溢れる心地よいナンバーです。両者とも、現代のインドネシア・ジャズシーンを牽引する存在といえます。Gerald Situmorangはソロアルバム『Solitude』の日本盤リリースを手伝ったり、そのCDライナーノーツを書かせて頂くなど、以前から馴染みのあるアーティストなので、今度彼の特集回をやりたいと思います。

Amelia Ong(アメリア・オン)はオーストラリアの音楽学校でジャズを学び、インドネシアに帰国して本格的に活動をスタートした人物。ジャワジャズフェスティバル等の著名な音楽フェスにも出演する実力派です。2015年のデビューアルバム『Amelia Ong』より、シャープで疾走感のある曲を紹介しました。前曲「Opening a New Door」のSri Hanuraga(スリ・ハヌラガ)が、このアルバムでも全編でピアノを弾いています。切れ味のある演奏力で聴き応え抜群です。

コーナーの最後はいつも静かめの曲をお届けしています。ラストは、昨年11月に《インドネシアの女性ジャズボーカル》特集をしたときにも紹介したChika Olivia(チカ・オリヴィア)。ボストンの名門バークレー音楽大学で音楽を学んだボーカリスト兼ピアニストです。個人的にはインドネシアで近年最も気になるアーティストで、新作が発表されると必ずチェックします。アルバムリリースも楽しみな逸材。

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《アジアのジャズ》をテーマに選曲した今回のSound of Afterglow。オンエアした曲を集めてSpotifyのプレイリストを作成しました。オンエア以外の曲もセレクトしていますので、ご興味のある方はぜひ。