現代インドネシアポップ界の素晴らしき音楽家、モンド・ガスカロ(Mondo Gascaro)。先日、彼が主宰するレーベルIvy League Musicから、新曲「Dian Asmara」がリリースされました。(カワズ)
本日紹介するモンド・ガスカロのニューシングル「Dian Asmara」は、Rien Djamainという女性シンガーをフィーチャリングしたナンバーです。Rien Djamainは1970年代から活動する歌手で、恐らく最も知られているのは、1976年にリリースしたアルバム『Api Asmara』。このアルバムは、インドネシアジャズ黎明期の大家ジャック・レスマナ(Jack Lesmana)が楽曲アレンジやエンジニアを担当し、さらに演奏面も完全バックアップした作品で、インドネシア版ローリングストーン誌が企画したオールタイムベストでも第7位にノミネートされるなど、現在でも様々な世代に影響力のあるアルバムの一つです。
Rien Djamain "Api Asmara"
1970年代後半から1980年代にかけてのインドネシアポップスは、ジャジーで洗練された楽曲が数多くあり、Rienもそんなシーンの第一人者だったといえます。モンド・ガスカロはずっと彼女のファンだったそうで、「自分の作った曲をRienが歌うなんて信じられない」とコメントしています。ちなみに、モンド・ガスカロが作った今回のシングル「Dian Asmara」のタイトルは、先述の『Api Asmara』を引用したそうです("Asmara"は英語で"Romance"の意)。
今年の春にモンド・ガスカロは、1970年代のシンガー・ソングライターの楽曲「Apatis」を映画のサウンドトラックの中でカバーしました。彼は、ブラジル音楽やジャズ、ソフトロック、映画音楽など、様々なジャンルにおいて、過去に生まれた音楽を現代的にアップデートして自らの音楽性へと一体化してきたアーティストだと思います。今作もまた、彼らしいソフトな質感でそれらを洗練されたポップスに昇華しています。そして、Rienというシンガーの偉大さや、彼女のしなやかな歌声の魅力を再認識させてくれた素晴らしい一曲といえるでしょう。
Mondo Gascaro, Rien Djamain - Dian Asmara