2022年2月27日日曜日

Sound of Afterglow vol.23 《Manila Sound pt1》


熊本シティエフエム金曜日の番組「セレナ・セラータ」の音楽コーナー《Sound of Afterglow》の23回目が放送されました。今回はフィリピンの「マニラ・サウンド」をテーマに選曲しました。後にOPM(オリジナル・フィリピーノ・ミュージック)と呼称されるようになるフィリピン国産の大衆音楽の出発点となった「マニラ・サウンド」。1970年代後半に登場した、当時の新世代のアーティストの内、今回はソロアーティストに絞って楽曲を紹介しました。(カワズ)

ボン・ペネラ(Bong Penera)はボサノヴァやサンバなどのブラジリアン・サウンドを志向していた鍵盤奏者/コンポーザー。70年代に3枚のアルバムをリリースしています。1977年の『Batucada Sa Calesa』から2曲紹介しました。1曲目「Beat Contemplation」は小気味よいエレピのフレーズが痺れるジャジーなナンバー。2曲目「Batucada Sa Calesa」は疾走感溢れる高速サンバで、往年のセルジオ・メンデス&ブラジル66あたりを彷彿させます。
ホセ・マリ・チャン(Jose Mari Chan)は1960年代後半から活動している歌手/コンポーザー。フィリピンを代表する音楽家であり、テレビ等にも出演した国民的ビッグネームです。ビートルズをはじめ当時のポップソングを多数カバーする一方、CMソングやジングルなど多数制作していました。1曲目の「Big Beautiful Country」はその音楽性を裏付けるように、短いながらもフックの効いた素晴らしいアレンジが見事。2曲目にお届けした「Love at Thirty Thousand Feet」は1975年『Here & Now』の収録曲で、フィリピン航空のコマーシャルソングとして使用されたそうです。
エラ・デル・ロザリオ(Ella del Rosario)は《マニラ・サウンド》の代表的なグループHotdogのメンバーだったシンガー。1977年までバンドに在籍し、そのあとにソロに転向したようです。ソロ転向後の1979年にリリースしたアルバム『Ella』からスウィートなディスコナンバーを2曲紹介しました。オリジナルアルバムとしてはこの一枚しかリリースしていませんが、同作収録の彼女のヒット曲「Mr. Disco」は現在もフィリピンポップスの代表曲としてカバーされ続けています。


シャロン・クネタ(Sharon Cuneta)は、歌手活動の他、女優やテレビ番組の司会などで活躍する人物。アルバムは30枚以上リリースし、映画も60本近く出演していて、フィリピンのエンタメ業界で最も成功したいわばメガスターです。1979年のセカンドアルバム『Sharon』に収録されている曲を紹介しました。当時のマニラサウンドは、ディスコナンバーが数多くあります。おそらく、当時駐留していた米軍関係者向けのレストランやバーなどで、そうした音楽が求められていたのだと思います。


コーナーの最後は、リラックスできるゆったりめの曲を紹介しました。ティト・ミナ(Tito Mina)は、1980年代初頭あたりから活動しているバラード系の男性シンガーソングライター。お届けした「Ikaw Pa Rin」は、アメリカンポップス「There Will Be Another You」のカバー。フランク・シナトラやチェット・ベイカー、ナット・キング・コールなどもカバーしましたが、ティト・ミナのバージョンは、クリス・モンテスのバージョンに最も近いと思います。ソフトロックテイストの洗練されたポップスに仕上がっています。ちなみに、後年ティト・ミナはこの曲を再度別のアレンジでカバーしています。彼の代表曲なのだと思います。

--------------------------
《マニラ・サウンド》のうち、ソロアーティストに絞って紹介した今回のSound of Afterglow。オンエアした曲を集めてSpotifyのプレイリストを作成しました。オンエア以外の曲もセレクトしていますので、ご興味のある方はぜひ。