インドネシアポップシーンのベテラン音楽家、Fariz RM。数々の若手アーティストに長年影響を与え、今なお現役で活躍するインドネシアンポップレジェンドの過去作品が今年レコードで再発されました。(カワズ)
Fariz RM(フルネーム:Fariz Rustam Munaf)はインドネシアで1970年代後半から活動する音楽家。日本で紹介される機会はあまり多くなかったように思いますが、同じくインドネシアで活躍している現行のインディーバンド、ホワイト・シューズ・アンド・ザ・カップルズ・カンパニーの作品にクレジットされている人物なので、彼らの音楽を聴いたことがあれば、名前を目にしたことがあるかもしれません(Fariz RMは、ホワイトシューズの名作セカンドアルバム『アルバム・ヴァカンシー』に収録されている「Selangkah Keseberang」の作者です)。
これまでに20枚近くのソロアルバムやそのほか多くのバンド/グループ名義で作品をリリースしており、最近では現行のアーティストとのコラボレーションも積極的に行っています。
今回再発された2枚のアルバムは、いずれも当時はカセットテープのみでリリースされた作品で、公式のアナログ盤は初めて。本人の全面協力もあり、しっかりマスターテープから起こされた音源のようです。
Fariz RM 『Early Tapes 1977-1982』
まず1枚目に紹介するのは、本人のソロ名義の作品で、活動初期のカセットテープ音源からコンパイルした音源集『Early Tapes 1977-1982』。シンセサイザーを多用したポップでダンサブルな曲が収録されています。前述の名曲「Selangkah Keseberang」の本人歌唱バージョンがレコードで聴けるのはとても貴重です。演奏が拙い部分もありますが、若き日の彼が抱いていたであろう「音楽に対するパッション」が垣間見えるようで、どこかパンクスピリットの表れのようにも思えてきます。また「Selangkah Keseberang」は2009年にインドネシア版ローリングストーン誌が選出した「ベスト・インドネシアン・ソング150」にもランクインしたり、ホワイトシューズ以外でもカバーバージョンが存在していたりと、名実ともにインドネシアンポップスを代表するナンバーといえます。
TRANSS 『Hotel San Vicente』(1981)
もう一枚は、彼が率いたTRANSSというグループ名義のアルバム『Hotel San Vicente』。TRANSSでは2枚のアルバムを残していますが、こちらは1981年リリースの1stアルバムです。ソロ名義の音楽性にさらにソウル~ファンク色を強めたテイストで、バンドのタイトなプレイがFarizの作る抜群のメロディを引き立てています。個人的なベストトラックは、B1に収められた「Jawab Nurani」。特にこの曲の込み上げていくようなとびきり印象的なサビパートは、同時代の欧米のAOR~ライトメロウな作品群と全く引けを取らない存在感を示しています。ちなみにモンド・ガスカロが所属していたインドネシアのバンド、Soreもこの曲をスタイリッシュにカバーしています。
どちらのアルバムも、日本国内のレコードショップで入手できますので、気になった方はチェックしてみてください。