2018年1月21日日曜日

日々の余韻アーカイブス(その13)〜ニック・ドレイクに想いを馳せて〜

2013年4月12日から2014年2月13日までの1年弱の間、僕はTwitterやFacebook上で、【日々の余韻】というタイトルの投稿を毎日行っていました。基本的に日々の投稿は短めのディスクレビュー。それと月に一回程度、コラム的に長めの文章を書いていました。
今日は【日々の余韻】で書いた記事のうち、英国で生まれた孤高のシンガー・ソングライター、ニック・ドレイクにまつわる音楽を4枚紹介します。2018年は彼の生誕70周年です。(カワズ)


2014年1月1日 【日々の余韻 Daily Afterglow 257】
Elton John 『The Covers Record』 (2011)


無名時代のエルトン・ジョンは、スーパー等で売られていた廉価版のヒットナンバーコレクション(オリジナルとは違う歌手による安っぽいカバーアルバム)の歌い手の一人でした。これは、その時に吹き込まれた曲をまとめたカバー集。ビーチ・ボーイズやバッドフィンガー、S・ワンダー等の曲とともに、ニック・ドレイクの「Day Is Done」「Way To Blue」「Time Has Told Me」が収録されています。この三曲については、以前『Nick Drake Session - Best Of DJM Demos』や『Prologue』といったタイトルで非公式リリースされていたものと同じ音源のデモトラックです。

この“ニック・ドレイク・セッション”の音源には逸話が残されています。エルトン・ジョンは以前、エイズ基金に自分のレコードコレクションを全て寄付したらしいのですが、どうしても手放したくなかったLPが二枚あり、アセテート盤と呼ばれるその時のテストプレスは、そのうちの一枚だそうです。(もう一枚は、ビートルズ四人全員のサインが入ったホワイトアルバム。)

生前評価されず夭逝した孤高のSSWと、不遇の時代を過ごした後のポップスター。二つの若き才能の密かな出会い。繊細で優しい旋律。そして手放せなかったアセテート盤。音質は良くありませんが、資料的価値以上の重みを個人的には感じています。

なお、この『The Covers Record』はLPのみの発売ですが、CDも付属しており、どちらでも聴くことが出来ます。
Elton John - Way to Blue
--------------------------

2013年12月28日 【日々の余韻 Daily Afterglow 258】
Nicked Drake (Gareth Dickson) 『Wraiths』 (2013)


グラスゴーのSSWガレス・ディクソンが、Nicked Drakeという名義でリリースした、孤高の天才ニック・ドレイクのカバー集。幻想的なオープンチューニングのギターの調べとメランコリックな歌声は、作品のタイトル(Wraiths=幽霊)が示す通り、まさにニック・ドレイクの亡魂が宿ったかのよう。全11曲中8曲が、彼の遺作となったサードアルバム『ピンクムーン』から。
Nicked Drake - Road
--------------------------

2014年1月3日 【日々の余韻 Daily Afterglow 259】
Dringe Augh 『Drooled & Slobbered』 (2013)


〈韓国のニック・ドレイク〉と称されるSSWドリンジ・オーのセカンドフルアルバム。アコースティックギター中心によるフォーキーな旋律ながら、ピアノやストリングスの優美な調べが、繊細で内省的な歌に独創的な広がりをもたらす作品です。『ブライター・レイター』のナチュラルで親しみ易い質感と、『ピンクムーン』のメランコリア。その両方を感じさせる素晴らしい一枚です。
Dringe Augh - Finite
--------------------------

2014年1月12日 【日々の余韻 Daily Afterglow 285】
Molly Drake 『Molly Drake』 (2013)


2014年で没後40年となるニック・ドレイク。2013年にリリースされたこの作品は、彼の母親、モリー・ドレイクが1950年代に録音していた彼女自身の音源集。シンプルなピアノの弾き語りで、半世紀以上前のホームレコーディングです。幼き日のニックも聴いていたであろう、エレガントでチャーミングな歌声。アンティーク品に触れるときに感じる古き良き匂いが、この録音物からは漂ってきます。
Molly Drake - Happiness