2019年4月28日日曜日

日々の余韻アーカイブス(その19)~アルゼンチンの音楽~

最新号の月刊誌ラティーナ5月号に『アルゼンチン音楽を聴こう』という素晴らしい特集が組まれています。それに触発されて、このところアルゼンチン音楽を聴き返しています。今回は過去にSNSにアップした【日々の余韻】の投稿から、そんなアルゼンチン音楽の10作品を再掲載。(カワズ)




2013年5月2日 【日々の余韻 Daily Afterglow 021】
Jorge Fandermole “Navega” (2002)

カルロス・アギーレが主宰する<Shagrada Medra>から2002年にリリースされた、ホルヘ・ファンデルモーレのセカンドアルバム。昨今のアルゼンチン・フォルクローレの諸作に比べて、どちらかといえば全体的に<うた>が中心に据えられているように思います。冒頭の「Cuando」は瑞々しさ、繊細さ、劇的なパッション、極上のメロウネス、それら全てを内包した素晴らしい一曲です。アギーレ自身もピアノとアコーディオンで参加しています。
♪Jorge Fandermole - Cuando


2013年5月9日 【日々の余韻 Daily Afterglow 028】
Miguel Krochik “Guilmar” (1973)

ジャケットのアートワークも印象的で素晴らしいアルゼンチンのシンガー・ソングライター、Miguel Krochikが1973年に残した唯一のアルバム。中南米特有のプログレッシヴな展開や全体に漂うアシッド感がありつつも、全体を通してとてもドリーミーで牧歌的な作品です。冒頭の「Guilmar」は、鳴り響くフルートの調べが郷愁を誘う、とびきりセンチメンタルなナンバー。


2013年7月3日 【日々の余韻 Daily Afterglow 083】
Agustin Pereyra Lucena Quartet “La Rana” (1980)

アルゼンチンのボサノヴァ・ギタリスト、アグスティン・ペレイラ・ルセーナが1980年にリリースした通算4枚目のアルバム。経緯は良くわかりませんが、ノルウェイのオスロでレコーディングされたのだそうです。録音環境の変化が影響しているからか、南米特有のサウダージ感よりも、フュージョン的な実験性や立体的な音作りを追及したような作品。可愛らしいジャケットのアートワークも含め、聴いたことのある彼のアルバムでは最も好きな一枚です。
♪Agustin Pereyra Lucena Quartet - La Rana (Full Album)


2013年8月4日 【日々の余韻 Daily Afterglow 115】
Tomas Lebrero Y El Puchero Misterioso “Nueva Kan Ze On (新観世音)” (2009)

バンドネオン奏者のトミ・レブレロは、アルゼンチン出身のシンガー・ソングライターで、このアルバムは、2009年に発売された日本編集盤のベストアルバム。叙情的で人間味に溢れ、アルゼンチンの伝統を受け継ぎながら革新にもチャレンジするトミの魅力を余すことなく堪能できる一枚です。中でも、70'sテイストのメランコリックな「7 Días(7日間)」が一番好き。ヴィニシウス・ヂ・モライスにインスパイアされたナンバーとのこと。
♪Tomás Lebrero - Siete días + Gualeguay


2013年9月10日 【日々の余韻 Daily Afterglow 152】
Dario Jalfin “Entre Otros” (2012)

アルゼンチンのシンガー・ソングライター、ダリオ・ハルフィンのサード・アルバム。力強さの中にどこかブルースを感じるピアノと歌声が、季節の終わりの物寂しさを際立たせる一枚です。特筆すべきは、抜群の存在感を示すフアン・パブロ・ディ・レオネのフルート。時にシリアスで時にダイナミックなその表現力は、クラシカルな歌曲を思わせる作品の世界観に、より一層の深みを加えています。
♪Darío Jalfin - Pablo y Carla


2013年10月29日 【日々の余韻 Daily Afterglow 193】
Mussa Phelps “Now Here, Nowhere” (2008)

ムッサ・フェルプスは、フェルナンド・カブサッキらと活動を共にするアルゼンチン音響派アーティストのひとりで、このアルバムは彼のソロワーク。ダークで奥行きのあるサウンドスケープの中に、アルゼンチン特有の瑞々しさと幻想的な風景が見え隠れする作品。リトル・クリーチャーズを想起させる「Bring the Summer」や「Rhythm」、SSW作品としても通用しそうな「Song For」など、どれも聴き応えのあるナンバーばかりです。
♪Mussa Phelps - Bring the summer


2013年11月14日 【日々の余韻 Daily Afterglow 209】
Belén Ilé “Sombra de Ombú” (2008)

ブエノスアイレス出身のシンガー・ソングライター、ベレン・イレーのデビュー作。カルロス・アギーレやアカセカ・トリオなど、現代アルゼンチン音楽界を代表する豪華な面々がサポートした贅沢なアルバムです。アギーレやホルヘ・ファンデルモーレをはじめとするカバー曲と、彼女の自作曲がバランス良く配置されています。ソフトかつ艶のあるボーカルと、上品に躍動するアンサンブルは、心地よくも決して聴き流せるたぐいの音楽ではなく、思わずその洗練された世界観に浸ってしまう極上の一品です。
♪Belén Ilé - Luna Costera


2013年11月25日 【日々の余韻 Daily Afterglow 220】
Maria Pien “La Vuelta Manzana” (2012)

ブエノス・アイレス出身のシンガー・ソングライター、マリーア・ピエンによる、たおやかで親しみ易いアルバム。アコースティックギターを中心としたシンプルな楽曲に、彼女の透明感ある凛とした歌声がナチュラルに融和する作品です。4曲目の「Spring Inside」は、センチメンタルな旋律とアルペジオの調べが胸を打つ名曲。ギターを小脇に抱えたアルバムジャケットのアートワークも含め、その気取らない佇まいが好きです。
♪Maria Pien - Spring Inside


2013年12月18日 【日々の余韻 Daily Afterglow 243】
Pablo Grinjot “Rocha” (2009)

アルゼンチンで活躍するバイオリニスト、パブロ・グリンホトのソロアルバム。親しみ易いメロディにアコースティックギターの柔らかなアルペジオ、そしてノスタルジーを掻き立てるピアノの旋律。冒頭の異国情緒溢れる「Milonga del Tren」を聴いてすぐに愛聴盤になりました。多彩な表現の隙間から時折り見え隠れするネオアコ的な青さも好きなポイントです。
♪Pablo Grinjot - Milonga del Tren


2014年2月9日 【日々の余韻 Daily Afterglow 296】
Lautaro Feldman “Oratual” (2012)

インディペンデントに活動するSSWラウタロ・フェルドマンのファーストアルバム。アコースティックギターを中心とした創造性溢れる多彩な表現と、オーガニックで瑞々しいアルゼンチン特有の質感に心が弾む一枚です。特に冒頭の「Sheli」では、複雑に折り重なるリズムパターン、躍動感あるギター、そして牧歌的な歌声と旋律がぴったり噛み合い、ナチュラルで豊潤なグルーヴを醸し出しています。
♪Lautaro Feldman - Sheli