2018年10月14日日曜日

黙ってピアノを弾いてくれ

チリー・ゴンザレスのドキュメンタリー映画、『黙ってピアノを弾いてくれ』を鑑賞しました。合わせて、彼のソロピアノ作第三弾『Solo Piano III』を買いました。



先日、カナダ出身のピアニスト、チリー・ゴンザレスのドキュメンタリー映画『黙ってピアノを弾いてくれ』を劇場で鑑賞しました。彼がパリやベルリンで活動し始めたころ(まだ“チリー・ゴンザレス”と名乗る前)から、《ソロピアノ》以降の現在に至る様々な活動の様子が、時に狂気的とも言える過激なパフォーマンスの映像などとともに、スクリーン狭しと映し出されます。ある時は挑発的なラップでオーディエンスを沸かし、またある時は独り静かにピアノと対峙するゴンザレス。チリー・ゴンザレスとは天才アーティストなのか、それとも稀代のエンターテイナーなのか。そんな命題に対して、それらを二律背反的なものと捉えて上手に切り替えるのではなく、古き伝統や自らの血筋を受け入れたり、時に自らを奮い立たせたりしながらその両方を自身の身体とその強烈な個性を媒体として共存・共鳴させようと試みるひとりの男を描いた「もがきと挑戦の物語」のように僕の目には映りました。ゴンザレスが作る音楽だけでなく、彼の振る舞いや生き様に惹かれる方には是非ご覧頂きたい作品です。
映画 『黙ってピアノを弾いてくれ』 予告編

また、チリー・ゴンザレス最新アルバム『Solo Piano III』も買いました。今や彼の代名詞とも言えるソロピアノシリーズも、今作で最終章だそうです。『I』や『II』に宿る、新しさと懐かしさが同居する唯一無二の音楽性と、室内楽をテーマにした『Chambers』や前作『Room 29 (with Jarvis Cocker)』で描いた新たなるオリジナリティ。それらの要素がこの作品で美しく交わり、シリーズ集大成のまさに到達点として結実しているように感じました。そして二枚組となったアナログ盤の最終面(Side-D)は、まるで優れた映画が終幕前に見事に物語の伏線を回収するかのように、彼のこれまでの音楽観のヒントやバックボーンが見え隠れする内容になっています。



Chilly Gonzales 『Solo Piano III』

Tracklist
Side A
• Treppen (1:30)
• Pretenderness (2:44)
• Prelude In C Sharp Major (2:38)
• Famous Hungarians (2:05)
• Chico (1:34)
Side B
• Nimbus (2:01)
• Be Natural (3:47)
• Ellis Eye (2:54)
• Present Tense (2:41)
• Cactus Impromptu (2:21)
Side C
• Lost Ostinato (3:00)
• Blizzard In B Flat Minor (1:37)
• October 3rd (3:19)
• Kopfkino (3:46)
• Whist (2:28)
Side D
• The Secrets of Solo Piano III (12:32)