2015年8月14日金曜日

日々の余韻アーカイブス(その2)〜カンバスのこと〜

今日は、8/16に福岡市内でライブを行うカンバスについて、【日々の余韻】で書いた3つの記事を再アップします。(カワズ)

  • 2013年4月12日から2014年2月13日までの1年弱の間、僕はTwitterやFacebook上で、【日々の余韻】というタイトルの投稿を毎日行っていました。基本的に日々の投稿は短めのディスクレビュー。それと月に一回程度、コラム的に長めの文章を書いていました。

2013年5月19日 【日々の余韻 Daily afterglow 137】

ミニアルバム『こころでもっと』

カンバスは2009年に結成されたバンドで、福岡市内を中心にこれまで精力的にライブ活動を行ってきました。昨年リリースされたミニアルバム『こころでもっと』は、インディバンドとは思えないほど高品質に仕上がったポップな作品で、彼らの魅力が余すことなく詰まった一枚。今日はその魅力を自分なりに少し探ってみることにします。

まず、洗練された良質なポップミュージックを生み出すのに見合った高い演奏力。音響設備やスペースが制限されるミニライブなどであっても、少ない楽器の音数を、互いにバランスを取りながら効果的に補完し合うことで心地良いグルーヴを生み出しています。まるで歌うようなメロウなベースラインは個人的にも特に好みです。

また、ソングライティングやアレンジの妙にも目を見張るものがあります。“ジャパニーズ・シティ・ポップ”と呼ばれる日本的なポップスのセオリーに対して敬意を払いながらも、その枠からはみ出そうとする試みを、彼らの楽曲からは感じることができます。例えば「夢の列車」に代表されるような、ヴァースからブリッジ、あるいはブリッジからコーラスへ意外性のある展開があったり、「やさしさの地平」のようにオーソドックスな流れの途中で思わぬ場面が見られたり。その独自性こそが、良い意味で<カンバスらしさ>となっているように思うのです。

そしてもう一つ、彼らの音楽からは憂いを感じます。安定感のあるプレイや優れたメロディセンスとは裏腹に、自分と他者との距離の測り難さが、孤独な街の色合いともに繊細な言葉で描写されていて、こうした一面は彼らの魅力を紐解く上でとても重要なエッセンスだと個人的には思っています。
技巧的に優れたプレイヤーも、叙情的な世界観を紡ぐソングライターも国内には沢山いますが、その両方を合わせ持った現在進行形のバンドはそんなに多くはないように感じます。

少年の揺れ動く心の葛藤と、青年の堂々とした逞しさ。その狭間を行ったり来たりしながら、それでも前に進もうとする「もがき」のようなものが彼らの最大の魅力なのだと思っています。

2013年12月1日 【日々の余韻 Daily afterglow 226】

7インチシングル「My Sweet Love Song」

先日のレコ発ライヴも大成功だった福岡の二人組カンバスによる限定7インチシングル。アーバンで印象的なギターのリフ、控えめながら心地よいグルーヴをもたらすベース&ドラム、そしてゲスト参加したINO hidefumiが奏でるフェンダーローズ。どれも最高にクールで素晴らしいナンバーです。

でも個人的に一番好きなのは、この曲のタイトルです。AやTheなどの当たり障りのない冠詞ではなく、あるいは安易に消費され得るOurやYourでもなく、「My」を選んだ感性。そこには、彼らの流儀や美学だけでなく、自己と向き合おうとする作り手としての誠実さを感じることができます。そんな彼らの真摯な眼差しが、ポップスというフィルターを通じて、さらに多くの人の心に届くことを願っています。

2014年1月10日 【日々の余韻 Daily afterglow 266】

アルバム『流星のベクトル』

先日、高校一年からの付き合いになる菱川くんと久々に会話。職業は美術教師。で、カンバスのベーシスト、ひっしーの従兄弟。去年彼は勤務先の学校の昼休みに、校内放送でアルバム『流星のベクトル』を流したのだそう。

教室のスピーカーからカンバス。なんだか素敵じゃないか。