2016年1月1日金曜日

日々の余韻2015

あけましておめでとうございます。2015年末は【日々の余韻2015】と題し、FacebookとTwitterで昨年発売された新譜に絞って10枚のディスク・レビューを行いました。
今日はそれらの記事を再アップします。2016年もどうぞよろしくお願いします。(カワズ)



①秋休み 『3番目の季節』

韓国の二人組、秋休みのサード・アルバム。キャリアを重ねても変わらない、ピュアでフォーキーなメロディがホロリとくる一枚です。素朴な歌に切ないドラマ性を滲ませるピアノやストリングスの調べも素敵。個人的には彼らの作品の中で一番好きなアルバムです。日本語で歌う国内盤ラストナンバーも必聴。

②Hanging Up The Moon 『Immaterial』

シンガポールで活動するSean Lam率いるグループのサード・アルバム。かつてのシカゴ音響系に通じるバンドアンサンブルと、ニック・ドレイクを彷彿させる郷愁の旋律が美しい作品です。アシッド感漂う独特な浮遊感と温もりを帯びたギターのアルペジオが重なる世界観は、まるで凍てついた景色に射し込む陽の光のよう。前作同様にKitchenレーベルからリリースされています。

③The Wellgreen 『Summer Rain』

グラスゴー出身の4人組、ウェルグリーンによる全編ポップな一枚。ヴィンテージ感溢れるフォーク・ロックなタイトル曲に始まり、マッカートニー〜パイロット直系のメロウ&キャッチーな英国産ソフトロックが満載です。スペインのレーベルPretty Oliviaからリリースされていますが、日本国内での流通が無いのがとても残念。


④Ze Manoel 『歌、そして静けさ』

ブラジルのシンガー・ソングライター、ゼ・マノエウのセカンド・アルバム。前作で展開した上品なサンバジャズのほか、冒頭の「Agua Doce」や中盤の「Sereno Mar」などスケール感のある楽曲も加わり、さらに深化した世界観が表現されています。表題曲「Cancao E Silencio」や「O Mar」といったサウダージに満ちたナンバーも素晴らしく、その豊かなバリエーションで聴く者を飽きさせない意欲作です。


⑤Leonardo Marques 『Curvas, Lados, Linhas Tortas, Sujas E Discretas』

ブラジルのミナス出身のレオナルド・マルケスによるセカンドアルバム。インディー・フォークの流れを汲む音楽性と、ミナス特有の空気感。作品全体を憂いとペーソスが包み込んだ内省的な一枚で、エリオット・スミスの諸作やショーン・レノンの『Friendly Fire』を彷彿とさせます。そして今も昔も、ミナス地方で育まれる音楽には共通するメランコリーが宿っていることを改めて実感しました。


⑥Guilherme Ribeiro 『Tempo』

サンパウロの鍵盤奏者、ギリェルミ・ヒベイロによるアーバンでスタイリッシュなジャズ。透明感溢れる瑞々しいピアノの旋律が、タイトなリズムセクションや躍動するサックスと見事に融合し、都会の夜に洗練をもたらすアルバムです。ジャケット等のアートワークを手掛けているのは、現代サンパウロシーンのキーパーソンの一人、ダニ・グルジェル。ブラジル音楽に新たな風を吹き込んだ“ノヴォス・コンポジトーレス”の流れを感じる一枚です。

⑦Sufjan Stevens 『Carrie & Lowell』

浮遊感のある幻想的なサウンドにコーティングされた、イノセントな情景。繊細なギターとともに淡々と紡がれるノスタルジア。孤高のストーリー・テラー、スフィアン・スティーヴンスの今作は、聴く者の心にそっと染み込んで響く、たおやかなアルバムです。彼の代表作『イリノイ』や『ミシガン』と肩を並べる一枚。

⑧Glue Trip 『Glue Trip』

ブラジルの二人組ユニット、グルー・トリップのファースト・アルバム。ダウンテンポなグルーヴとドリーミーでポップな旋律、そして全編に漂うほのかなサイケ感がクセになる作品です。Glue Tripというグループ名もまさにぴったり。曲ごとに様々なアイデアが詰め込まれていて、デビュー作にしては引き出しを開けすぎでは?と心配になるほど、幅広い音楽性を感じさせてくれます。

⑨Alberto Continentino 『Ao Som Dos Planetas』

多方面で活動するベーシスト、アルベルト・コンチネンチーノによる初のソロ作は、シックなジャケットからは想像も付かない、色鮮やかなブラジル産ソフトロック。華麗なコーラスワークや艶のあるヴィブラフォンの音色をはじめ、多幸感溢れるアレンジと上質なサウンドが実に素晴らしく、ロジャニコやミレニウム、フリー・デザインといった名前にときめく人にはぜひ聴いて欲しい至福の一枚です。

⑩Tobias Jesso Jr. 『Goon』

バンクーバーから来た孤独なピアノ弾き、トバイアス・ジェッソ・Jrのデビュー作。2015年も沢山の新しい音楽に出会いましたが、個人的に最も再生回数が多く、最も心を打たれたのはこのアルバムだったかもしれません。まるで70年代のSSW作品のような懐かしさも滲む、どこまでもメロウな12編の哀愁の物語。年の瀬に聴くと、よりいっそうセンチメンタルに響きます。