2017年2月26日日曜日

旅する風の音楽家、モンド・ガスカロ特集①

インドネシアのインディ・シーンを代表するポップ・マエストロ、モンド・ガスカロ。以前、SOREという人気バンドで活動していた彼のソロ・ファーストアルバム『RAJAKELANA(旅する風)』が遂にリリースされました!僕は僭越ながらこの国内盤CDのライナーノーツを執筆しましたが、今日は、本アルバムの他、シングルリリースされている曲や彼が在籍していたときのSOREの音源をいくつか紹介します。(カワズ)

Mondo Gascaro 『RAJAKELANA(旅する風)』(2017)



2015年にリリースされたシングル「Saturday Light / Komorebi」を経て、ようやく完成したモンド・ガスカロ待望のファースト・フルアルバム。モンドが愛した映画音楽やブラジル音楽、そして古今東西のポップスの要素が詰まった最高の一枚です。丁寧に紡がれたその豊潤でメロウなサウンドが実に素晴らしく、聴いているうちに暖かい季節の訪れが待ち遠しくなります。昨年発売されたインドネシア本国でも本作の評価は非常に高く、インドネシアのローリング・ストーン誌が選んだ2016年のベストアルバムで2位を獲得。ちなみに彼は、日本人の母親とインドネシア人の父親とのハーフで、本作のトレイラー動画↓でも、昭和の日本をモチーフにしています。
Mondo Gascaro "RAJAKELANA" (Trailer Video)

Mondo Gascaro 「Saturday Light / Komorebi」(2015)


インドネシアの人気バンド、SOREの主要メンバーとして活動したモンド・ガスカロのソロデビューは、配信と7インチアナログのみでリリースされたこのシングル盤。2014年にYouTubeにアップされたティーザー音源を聴いた時に、そのセンスの良さにとても驚き、興奮したのを憶えています。賑やかな土曜の夜の街灯りが目に浮かぶ「Saturday Light」。一方の「Komorebi」で描かれているのは、穏やかな日曜の朝の平和な光景。そんな、とある週末のコントラストが見事な珠玉の一枚です。日本盤アルバム『RAJAKELANA(旅する風)』のボーナス・トラックとして収録されていますので、7インチを買い逃した方はぜひ新作を。
Mondo Gascaro 'Saturday Light / Komorebi'

SORE 『Centralismo』(2005)


5人組グループとして2003年に結成されたSOREのファースト・アルバム。ファンク、ジャズ、ロック等のエッセンスが濃厚に詰まった聴き応えある一枚です。モンド・ガスカロはバンドのキーボーディストであり、ソングライターの一人でした。後半は特に素敵な曲ばかりですが、中でも白眉は彼が作ったジャジー・ポップ「No Fruits for Today」。2006年の映画『分かち合う恋』のサントラにも収録された、バンド史上屈指の名曲です。
SORE 'No Fruit For Today' (2005)

SORE 『Ports of Lima』(2008)


SOREのセカンドアルバム。モンドはこの作品に参加したあと、2013年にバンドを脱退しました(バンドは現在も活動中)。全体的にスケール感のある楽曲が際立つアルバムですが、モンド作のナンバーは他の楽曲に比べて実に繊細。数あるSOREの曲で個人的に一番好きな「Karolina」も彼のペンによるものです。そのメロウな世界観はまるでクリス・レインボウのよう。
SORE 'Karolina' (2008)